コラム 自費出版な毎日…
自費出版の費用計算から思うこと
サイトに掲載している書籍制作にかけられる費用の方程式
制作費=本の定価 × 部数 × 0.3
これは商業出版で出版社が利益を出すための方程式です。「本が全部売れた場合の総売上げの3割程度が制作費用ですよ。」ということです。しかし実際に自費出版などで多く見られるのは、先に部数と費用があって、それから本の定価を決めるというケースです。これを計算式にすると次のようになります。
本の定価=制作費 ÷(部数 × 0.3)
実際の数字にあてはめてみましょう。自費出版によく見られる制作費用が150万円で1,000部作成した本の定価を計算してみます。
本の定価=150万円 ÷(1,000 × 0.3)
ここから本の定価は5,000円になります。
これでは高すぎませんか? だったら2,000部作れば2,500円で定価をつけられると思いますか? いいえ、つけられません。何故ならば2,000部の制作費は150万円ではないからです。
私の経験からの話で恐縮ですが、一般の方の書かれた自費出版本の実売数は、50部〜多くて200部前後で、1,000部を超えることなどめったにありません。
もっとも印刷・製本の仕組みからは1,000部以下は台数計算になって制作費用にあまり差は出ません。そして1,000部と2,000部の制作費用はあまり変わりません。1,000部が150万円なら2,000部は180万円とかそんなものです。何故なら制作費用の多くを占める制作校正から刷版までの費用は部数に関係ないからです。部数によって変化するのは印刷代、用紙代、製本代ですが、この中でも印刷代は変わっても10〜20%くらいのものです。
そんなわけでついつい売れない本をたくさん作ってしまい、在庫をかかえて今度は在庫の維持費や資産計上される在庫本に苦しむというのが負のスパイラルです。
分かっていても、もしかしたら売れるのでは? の誘惑に負けて多くの人、会社が失敗して負債を抱えることになります。そして次こそ売れる本を作ろうとします。自転車操業の始まりですね。
100万部売れたら印税だけでも1億円! 出版は当たれば確かに大きいけど、失敗も数多くあります。
商業出版ならいざ知らず、自費出版の場合には自分の考えを人に伝える喜び、多くの優秀なスタッフと作品を作り上げる楽しみを目的にできたら何よりなのですが…。
2013.06.17